FC2ブログ


2014.02.23*Sun*

『愛をくらえ』

お祝いSSを頂きました


 『愛をくらえ』

作 はなつむぎ様

 買い物途中、喉の渇きと足の疲れを感じて、ふらりとコーヒーショップに立ち寄った。
 ここで“ホニャララ・カフェモカ”とか“キャラメル・ナンチャラ”とか注文できれば可愛いのに・・・と自分でも思うが、甘い物は苦手なんだから仕方ない。
 浅煎のグァテマラを注文し、受け取ってぐるりと店内を見回す。空きテーブルが1席。
 迷わずそこに座ってから、すぐに後悔した。隣のカップルが・・・ウザい。
 
 「前髪短くなってるでしょ?気づいてた?」
 「ごめん、気づかなかった。でもカワイイよ」
 「ホントに?ホントにそう思ってる?」
 「思ってるよ。世界一カワイイって」
 「ねぇねぇ、あっくんはロングとショート、どっちが好みなの?今、髪型に迷ってるの」
 「う〜ん、みぃはどっちも似合うと思うから、その質問は難しいなぁ」
 「え〜っ!それじゃあ決められないよ〜!」
 
 じゃあ丸刈りにでもしとけや・・・。
 こんなことを思ってからでは説得力はないと思うが、私は別にイチャつくカップルが嫌いというわけではない。
 互いの好きが溢れて、滲み出てしまう。そういう経験は自分にもあるから、微笑ましく見ることだってもちろんある。
 ただ、それを他者に見せつけることを目的に行うバカップルが嫌いなのだ。
 この2人はその典型。
 無意味な優越感と自己陶酔に、どっぷり浸かっている。
 流れている程良いボリュームのジャズも、コーヒーの味も完璧なのに。
 隣の席にピンポイントに落ちてくる隕石が、今宇宙を漂っていたらいいのに・・・と本気で願いながら、本屋の包みを開けた。
 おそらくそんな隕石は、都合よく頭上にあってはくれないだろうから。
 あとは自分がこの世界から逃避するしかない。
 お目当ての本を取り出したところで、逆隣の席から人が立ち上がる気配がした。
 空席になったそのテーブルに移ろうか一瞬迷ったが、あからさま過ぎる気がして実行にうつせない。
 自分のこういうところ、本当にイヤ・・・溜息を一つ吐いて、結局そのまま本を開いた。
 
 しかしその読書は、わずかな時間で終わることとなる。
 2人の青年が、その空席に座ったのだ。
 目を引く2人。1人は190近くありそうな長身で、けれど不思議と威圧感はない。柔らかそうな黒髪と、人懐こい印象を与える大きな瞳が特徴の青年。
 もう1人も彼ほど高くはないが、それでも十分な身長の持ち主で。背中の中程まである長髪と、なかなか見ない丸眼鏡がピッタリと似合っている。
 なるべく自然な動作に見えるよう意識しながら、パタンと本を閉じたーーーこの2人は目の保養になる。
 窓が彼らの方に面してあることに感謝しつつ、外の景色を見ている体を装う。
 腰を落ち着けた長髪の青年はコーヒーを一口含むと、重そうな本を取り出した。
 何かの専門書だろうかーーー文字を目で追うその姿に、胸がドキリと高鳴る。
 目元に浮かぶまつ毛の陰影に、色気を感じた。
 それは女性が放つ色香とはまるで違う、凛とした男性の色気。
 直視することすら憚られるような雰囲気に目線を外し、ふと黒髪の青年に目を向けてーーーそこからも視線を逸らした。
 彼がその人を見る眼差しが、あまりに甘く、艶やかで・・・真っ直ぐ見られない。
 自分の頬が火照るのを感じて、慌てて冷めたコーヒーを口に運んだ。

 「塩キャラメルとナッツのバナナ・パンケーキ、お持ち致しました」
 
 ウェイトレスの言葉に、再び彼らの席を見る。
 生クリームとキャラメルソースでゴテゴテとトッピングされたそのパンケーキは、それをキラキラした瞳で見つめる黒髪の青年の前に置かれた。
 飲んでるコーヒーも甘そうだけど、あのパンケーキもすごい・・・ビックリしながら見つめる私の気持ちを代弁するかのように、長髪の青年が口を開いた。
 「お前、どっちも甘ったるいものって・・・胸やけしないか?」
 投げかけられたその質問に黒髪の青年は「全然。むしろ幸せです」と崩れんばかりの笑顔で答えている。
 その笑顔があまりに幸せそうで、クスリとつい笑ってしまった私はーーー次の瞬間、また彼らから目を逸らすことになった。
 至福の笑みでパンケーキを頬張る姿を呆れたように見つめていた長髪の青年が、不意に一瞬・・・小さく微笑んだのだ。
 それは慈しむような、愛おしむような。そんな優しい微笑みでーーー。
 目線を外すために逆側を向いた私は、さっきのバカップルが赤面しながら彼らを見つめている姿を目撃して、思わずほくそ笑んだ。
 これが本物だ、バカップル!ーーーなぜだか私が勝ち誇るような気持ちになる。

 ウェイトレスに手を上げた。
 テーブル横に来てくれた彼女に小さな声で「隣と同じパンケーキを下さい」と注文する。
 甘いものは苦手だけど・・・今日はなんだか食べてみたい。
 

 運ばれてきたパンケーキはやっぱりとっても甘くってーーー。
 彼らの愛のお裾分けを、もらえたような気がした。


 
 ーー fin ーー

関連記事
スポンサーサイト



category : 宝物(w´ω`w)

プロフィール

ミナト

Author:ミナト
高永ひなこ先生の
「恋する暴君」が大好きです
勝手気ままに、ぬる〜くゆる〜く
脱線しながら書き散らかしています

ぬるいものしかありませんが、
18歳未満の方はご遠慮下さい

最新記事

宝物部屋は随時更新中♪(9/23更新)

恋する暴君にあなたが登場?!

カテゴリ

web拍手

web拍手 by FC2

何かございましたらこちらからどうぞ(非公開です)

最新コメント

リンク☆

素敵バナーを頂きました♪

R_a (らんたー)様より素敵バナーを頂きました! ありがとうございます♪

バナー2 バナー1

和暴君普及委員会

和暴君

高永ひなこセンセイ既刊本

全記事表示リンク

検索フォーム

お絵描き

カレンダー

09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

pixiv

カウンター

広告

10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
Copyright © どこからくるんだろう All Rights Reserved.
テンプレート:サリイ (ブログ限定配布版 / 素材: HELIUM)  …